
免疫力アップ
■体の防衛線/粘膜免疫と全身免疫
切り傷がもとで、腫れたり膿んだりすることは、誰でも経験します。
このことからも、皮膚が病原菌から体を守っていることがわかります。
体の外側は皮膚、体の内側は鼻、口、のどから始まって胃、小腸、大腸、肛門まで粘膜が続きます。消化管の粘膜は400平方メートルで、テニスコートの1.5倍、体の外側を覆う皮膚1.7平方メートルの何と、200倍以上もあります。
粘膜は薄くて弱く、いつもぬれていて、食べ物はつぎつぎと来て、栄養豊富で暖かく、ばい菌もすみやすいところです。実際、ヒトのおなかには500種、100兆個の腸内細菌が住棲んでいます。
腸内には善玉菌だけでなく悪玉菌も常在し、コレラ菌や下痢を起こすウイルスなどの外敵から守るために、粘膜には独特の免疫(粘膜免疫)が作られています。一方、粘膜を通過して体内に入ってきた悪玉菌や異物に対する免疫が全身免疫です。
このように、免疫には粘膜免疫(または腸管免疫)と全身免疫の2系統があります。
■免疫は白血球が協力して行う
血液中には赤血球と白血球があることはご存知ですね。免疫は白血球の仕事です。 白血球には沢山の種類があり、下表に示しました。これらの白血球が協調して体を守っています。
表 免疫担当細胞の種類と役割、免疫増強食品・医薬品
| 免疫の種類 |
担当白血球 |
細胞名 |
機能 |
高めるもの |
自然免疫
常時準備できている免疫。すべての異物に対して即座に反応し、作用を示すが、その力は獲得免疫に比べて弱い。 |
顆粒球 |
好中球 |
細菌を食べて殺す |
β-グルカン
(クレスチン
レンチナン,アガリクス
メシマコブなど)
エキナセア
酵母
乳酸菌
ピシバニール(OK432) |
| 好塩基球 |
アレルギー反応にかかわる |
| 肥満細胞 |
好酸球 |
アレルギー反応にかかわる |
| 肥満細胞 |
アレルギー反応にかかわる |
| NK |
NK |
がん細胞やウイルス
感染細胞を殺す |
| NKT |
NKT |
がん細胞を殺す
自己免疫疾患の発症を防ぐ |
| マクロファージ系 |
マクロファージ |
細菌やがん細胞を殺す。
老化した細胞を除き、
新品に更新する |
| 樹状細胞 |
抗原情報をリンパ球に渡す |
獲得免疫
個々の病原菌やウイルス、がんに対して作られる免疫で、抗原(異物)特異的で,強力であるが、出来上がるのに1週間必要。 |
Tリンパ球 |
Th1(1型Tリンパ球) |
細胞性免疫を促進する |
免疫抗体
ラクトアルブミン
経口SOD
γ-グロブリン製剤 |
| Th2(2型Tリンパ球) |
抗体産生を促進する |
| Ts(抑制性T細胞) |
特異免疫を抑制する |
| Tc(キラーT細胞) |
がん細胞やウイルス感染
細胞を殺す |
| Bリンパ球 |
Bリンパ球
プラズマ細胞
形質細胞 |
抗体を作る
(IgG,IgM,IgE,IgAなど) |
ここで、切り傷からばい菌が入ったときの免疫の対応を見てみましょう。まず、第一に駆けつけるのが好中球です。好中球が奮闘しても追いつかないと、助っ人を呼びます。第一の助っ人はマクロファージ系です。マクロファージ系細胞は、ばい菌を飲み込み殺す一方、さらに第二の助っ人リンパ球を呼びます。樹状細胞は侵入したばい菌の特徴を書いた似顔絵情報をTリンパ球に送り、Tリンパ球はBリンパ球に命じて似顔絵と同じばい菌めがけて突進するミサイルを作らせます。このミサイルは抗体と呼ばれます。抗体はばい菌に付着します。好中球やマクロファージの殺傷力は、抗体がついたばい菌に対して抗体がつかないときの10倍以上にも強力になり、ばい菌を体から排除します。その仕組みが免疫です。このように、リンパ球の仕事は異物に対して抗体を作り、免疫力を飛躍的に強力にすることです。
■即応性のある自然免疫とパワーある獲得免疫
菌が侵入してから、抗体ができるまでに1〜2週間必要です。第一発見者の好中球や第一の助っ人マクロファージの段階で駆除できれば軽く済みますが、菌の勢いが優るときは、リンパ球が抗体を作るまで待たねばなりません。好中球からマクロファージまでの免疫を自然免疫、リンパ球と抗体が関わる免疫を獲得免疫として区別しています。自然免疫はいわば常備軍、いつでも備えがありますがそんなに強力とはいえません。これに対し、獲得免疫は侵入した外敵のみに働き強力な攻撃力で撃退します。このように、免疫機構は自然免疫と獲得免疫の2段構えでできています。
しかし、獲得免疫では、抗体が出来るまで1週間以上かかるというのが問題点です。この問題点を解決したのがワクチンです。インフルエンザにかかる前に、インフルエンザワクチンで抗体を予め用意しておけばインフルエンザを予防できるというわけです。
獲得免疫が免疫力にとっていかに大切であるかは、エイズという病気が教えてくれます。エイズは獲得免疫の中心、免疫力の司令塔といわれるTリンパ球がエイズウイルスにより殺されてしまうために、抗体が作れません。また細胞性免疫やキラーT細胞も作れません。エイズでは自然免疫系はさほど影響をうけませんが、免疫力を失い、普通であれば何のことはない日和見菌感染などに負けてしまうことはよく知られています。
■腸管は最大の免疫臓器
腸管の表面には栄養を吸収するために、ビロードのように1ミリに満たない毛が密集しています。そのために、これを広げて伸ばすと400平方メートルもの面積になります。ここは、食べ物と細菌などの異物で常時覆われています。免疫で体を守るために、マクロファージやリンパ球もびっしり張り詰めて、備えています。そのために、腸管にはからだ全体の免疫細胞の6〜7割、抗体を作る細胞であるBリンパ球については8割が集まって働いています。腸管にはこのように沢山の免疫細胞が働いており、人体最大の免疫臓器です。腸管は毎日1グラム以上の抗体を作り続け、腸管内に分泌し、悪玉菌から腸管を守っています。
■粘膜免疫の特殊性/ファジーな粘膜免疫
免疫機能は、体から細菌、ウイルスはもとより、がん細胞も排除するために攻撃し、私たちの体を守る機能です。菌やウイルス、がん細胞を異物として自分と区別し、異物はいらないものとして体外に排除する機能です。免疫が健全である限り、健康が保たれます。
異物は菌やウイルス、がん細胞だけではありません。食べ物も空気と一緒にやってくる花粉やダニも異物です。腸管免疫は異物であるからといって、すべての異物に抗体を作るわけではないという特性があります。この点は、全ての異物に対して抗体をつくる全身免疫とは異なる粘膜免疫の特徴です。それどころか、口から入った異物が食べ物などの無害で栄養となるものに対しては、Tリンパ球がBリンパ球に抗体を作らせないようにしていることがわかっています。これを経口免疫寛容、経口免疫トレランスといいます。ところが、経口免疫トレランスが正常に働かない場合があります。卵アレルギーなどの、食品に対するアレルギーがその例です。
■腸管免疫は神経、ホルモンの影響を受けやすい
ストレスで胃がキリキリ痛むという話があるように、ストレスは消化器に影響します。腸管免疫も同じです。全身免疫に比べ、腸管免疫はストレスの影響を受けやすいことが分かっています。ストレス状態では、免疫バランスがアレルギー体質(Th1に対してTh2リンパ球優勢)に傾き、アレルギーの原因抗体(IgE抗体)の産生が高まり、経口免疫寛容を壊す方向に向かいます。これまで純粋な消化管運動障害と考えられてきた過敏性腸症候群IBSにもホルモンや腸管免疫が係わっていることが分かってきました。
■自然免疫を強める
自然免疫に係わる顆粒球やマクロファージ系の白血球はウイルス、細菌やカビの成分に対するアンテナ(TLR)を10チャンネル持っています。病原菌がアンテナにキャッチされると、これらの白血球は活性化し、病原菌を細胞内に取り込み、殺します。
例えばβ-グルカンはカビの成分ですが、茸やパン酵母やビール酵母、大麦やオートミルも同じ成分があり、アンテナを持つ白血球がこれらの成分により活性化されます。アガリクス茸や酵母のβ-グルカンを利用した食品はこのような原理に基づいています。
乳酸菌はβ-グルカンとは別チャンネルのアンテナにより捉えられて、同じようにこれらの白血球を活性化します。自然免疫系が活性化されると、結果的に獲得免疫にも影響して、獲得免疫の産物である抗体の量もふえたりします。
問題は自然免疫を活性化しても、加齢や、体の状態によっては対応できずに、抗体産生に結実しないという問題点があります。
実際、乳酸菌摂取による抗体産生の増強が、加齢動物では見られないことが報告されています(1)。
その様子を図1に示しました。ケフィールはケフィアとも呼ばれ、乳酸菌長寿食品の代表格です。ラットに28日間与えた前後の抗体量は、成ラットではケフィア摂取により増えるのに対し、老齢ラットでは逆に抑制されていたことがわかります。成人であっても、病気治療のために、やむを得ず、制癌剤やステロイド剤など免疫を抑制する薬剤を使用することがあります。この場合にも自然免疫を高める機能性食品の効果は期待できないことが考えられます。
■獲得免疫を強める
自然免疫に比べて獲得免疫は格段に強力ですので、獲得免疫が強まるのは生体には大変に好都合です。獲得免疫の主役は抗体です。人の血液から摂った抗体がガンマグロブリン製剤で、医薬品として使われています。しかし、腸管免疫を強化するためには、人の抗体ではない牛の抗体が有用です(2)。
エイズという病気をご存知と思います。エイズは獲得免疫の主役であるリンパ球がエイズウイルスで壊されるために免疫力が極端に下がり、腸管内に分泌される抗体が減って、悪玉菌がはびこり下痢などを起こします。エイズ患者の下痢に対し、ウシの初乳(お産の直後には抗体含量の多い乳が作られ、この乳が初乳です)の抗体を飲んで下痢が治療できることが確かめられています(3)。小児の下痢症の治療に、牛の初乳抗体と乳酸菌製剤とを比べた報告によると、乳酸菌より優れることが知られています(4)。
抗体はそれ自体が獲得免疫の最終活性産物です。加齢や、免疫力の未発達な小児やエイズの場合でも、健康状態に関係なく利用される方に等しく機能します。自然免疫を強めて抗体が増えることを期待するのと違います。
■乳清たんぱくで獲得免疫を免疫力アップ
チーズは牛乳を固めて乳酸菌で発酵させて作ったものです。牛乳を固めた時にできる上清が乳清です。乳清には牛乳中の微量たんぱくである抗体が存在します。抗体は熱に弱いので乳清に含まれる抗体を有効に利用するためには、熱を加えずに抗体を取り出すことが必要です。不要な熱を加えることなく、抗体を豊富に含む乳清たんぱくを取り出し、摂取しやすくしたのが「母乳のチカラ」で、獲得免疫を強化します。
■「母乳のチカラ」に含まれる悪玉菌抗体
多くのヒト悪玉菌に対する抗体が、「母乳のチカラ」に濃縮されていました。その量を調べた結果を図1に示しました
(3)。この結果はウシもヒトも、日常的にかなり共通の悪玉菌に曝されていることがわかり、ウシが作った抗体がヒトにも応用
できることを示しました。加齢や病気により、体が抗体をつくるチカラに支障がある場合でも、腸管内の免疫は、
ウシの抗体を補うことにより、確実に補完することができます。
図1 乳清たんぱくに含まれるミルク抗体

■便秘・下痢と善玉菌・悪玉菌:腸の健康は元気で美しくあるための基本です
下痢状態では栄養を吸収できず、体力の消耗につながります。また便秘は悪玉菌を増やし、腸管粘膜バリヤーを壊して細菌毒素が体内に入り込みやすくすることが知られています(6)。細菌毒素は吸収されると無用な活性酸素を作り、美容と健康を損ねる原因となります。また、細菌毒素は免疫細胞に作用して免疫を撹乱させ、リンパ球の反応を鈍らせたり(6)、不要な抗体を作らせて各種自己免疫病のもとになります(7)。さらに、細菌毒素が体に入ると経口免疫寛容を壊し、食物アレルギーの原因になることが報告されています(8)。
乳清たんぱくの抗体には細菌に対する抗体があり、この摂取により腸内細菌バランスを改善しました(図2)(9)。
また、細菌毒素に対する抗体が含まれ、毒素をブロックし、関節リウマチなどの自己免疫病の改善に役立つことが期待できます。
「母乳のチカラ」の効果は、幸いにして、トイレの匂いで簡単に分かります。匂わなければ、腸内環境は健全です。
図2 アサマ乳清たんぱく摂取による腸内細菌バランスの改善

引用文献
- Thoreux K et al. Kefir milk enhances intestinal immunity in young but not
old rats. Journal of nutrition (2001) 131:807-812
- Korhonen H et al. Bovine milk antibodies for health. British J Nutrition
(2000) 84:Suppl. 1: 135-146
- Stephan W et al. Antibodies from colostrums in oral immunotherapy J Clin
Chem Clin Biochem (1990) 28:19-23
- Kushnareva MV et al. The efficacy of using an immune lactoglobulin preparation
for correcting intestinal dysbacteriosis in newborn infants Zhurnal Microbiologica,
Epidemiologii Immunologii (1995) 2:101-104
- アサマ化成研究報告書 2006年度
- Khalif Il et al. Alterations in the chronic flora and intestinal permeability
and evidence of immune activation in chronic constipation. Digestive and
liver diseases (2005) 37: 838-849
- Torres BA et al. Modulation of diseases by super-antigens. Curr Opin Immunol
(1998) 10: 465-470
- Clements JD et al. Adjuvant activity of E. coli heat-labile enterotoxin
and effect on the induction of oral tolerance in mice to unrelated protein
antigens Vaccine (1988) 6: 269-277
- アサマ化成研究報告書 2006年度
|